エント リー

　　何事も、タイミングが大事です。「とりあえず」「なんとなく」「まずは」やらないで、先を見越してプレイしましょう。

 　　「自分のハンドにリード権を移す」ことのできるカードを「エントリー」と言います。つまり、勝てるカード（ウィナー） と、別の手にある同じスートのスモールカードの組合せです。エントリーをタイミングよく使えば、さまざまな問題を解決することができます。

１．ブロック回避
　　よく、スートが「ブロックしている」、と言いますが、それはこういう状況です。

ダミー ＡＫ 　　ハンド ＱＪ10９４

はＡから９まで揃っているので５トリック 連勝できるはずです。 　　ところが、ダミーのＡＫをとったあとは、ダミーにリード権が あ り、ダミーにはがもうないので、３トリック目 以降を続けてとることができません。

　　一方、「ブロックしていない」のは、このような場 合です。

ダミー ＡＫ２ 　　ハンド ＱＪ10９４

ダミーのＡＫを先にとった後、２をリードすることで、で５トリック連勝することができます。 　　ただし、このハンドでも、ダミーのＡＫより先に、２がなくなってしまうと、上の例と同じ 「ブロッ ク」の状況になってしうことに注意してください。

　　２つの例を比べると、「短いスートのスモールカード」 に重要な役目があることがわかります。

　　長いスートで連勝するには、必ず

　?@短いスートのウィナーを取る　
　?A長いスートのハンドにリード権を移す
　?B長いスートのウィナーを取る

という手順でプレイしなくてはなりません。この「?Aリード権を移す」ために必要なのが「エントリー」。この例では、ダミーの２とハンドのＱの組合せが「ダミーからハンドへのエントリー」なので、こ れをタイ ミングよく使うことが必要なのです。

　　ブロックを避けるために「短いスートの高いカードを先にプレイする」と言いますが、それは「短いスートのスモールカードは最後にとっておく」という意味でもあるので す。

２．エスタブリッシュしたスートをとる
　　エントリーをタイミングよく使って、他のスートのウィナーをとれるようにしましょう。

ダミー ＱＪ10９８ ＫＱＪ４ 　　ハンド ７６ Ａ２

ＮＴコントラクトです。 　　スペードはＡＫ以外、Ｑか ら８まで揃っています。ハートはＡＫＱＪの順にとれば４連勝できます。と りあえず先にをとってから、を出します か？？ そうすると、ＡとＫに負けた後、 ハンドにはが１枚もないの で、エスタブリッシュした10９８が取れ なくなるかもしれません。

　　この状況を前もって予想して、ダミーへのエントリーとなるダミーのＫとハンドの２の組合せを残しておく必要があります。

　　そのためには、ハートにはいっさい手をつけず、すぐに、をプレイするの が正しい手順です。ＡＫに先に負け てから、ハート４勝、10９８の順に とれば、スムーズに７勝できます。

　　もしなんとなく、Ａだけでも先にとると、Ａに負けたとき にハートを出されてＫと２を先に使わされてしまい、肝心なときに ダミーへ のエントリーがない、ということになってしまいます。

３．フィネスのために
　　よくエントリーが必要になる例として、フィネスがあります。

Ｎ ＱＪ10３ Ｑ８６ ＫＱ４ ９８２ 　　Ｓ Ａ９６ Ｋ10 ＡＪ10７２ ＱＪ10

３ＮＴ 　by 　Ｓ　　オープニングリード：ｘ 　　Ｑで勝ったあと、すばらしいスートにうれしくなり、つい、まずはを５勝してから考えてみると、はダミーから リードしてフィネスしたいことに気づきま す。しかし、時すでに遅し。ダミーへのエントリーはもうありません。しかたなく、Ａ（Ｋが落ちる わけないですね）、６とプレイしま すが、Ｋに負けると、 続けてＡＫ７、Ａととられてダウンです。

　　　このコントラクトでは、ウィナーは、１、０、５、１の７個なので、あと２つ増やす必要があ ります。を攻められてい るので、Ｋに負けに行く余裕は ありません。ということは、どのみちのフィネスが必 要なのです。それなら、エントリーがあるうちに思いきって、今すぐやってしまいましょう！

　　Ｑで勝ったら、Ｋでダミーに入り、すぐにＱを出してフィ ネスします。

１．切り札狩りの途中でも
　　ダミーは弱くてエントリーが少なく、一方、ハンドは強くてフィネスをしたいスートばかり、というのはよくある話です。エントリーの少ないダミーを有効 に活用するには、トランプスートのエントリーに注目しましょう。

Ｎ Ｊ２ Ｋ５ Ｑ９７５３ ８７６２ 　　　Ｓ ＡＱ ＡＱＪ７６２ ４２ ＫＱＪ

４ by　Ｓ　オープニングリード：Ｊ 　　ルーザーは、１、 ０、２、１の４つ。1つ減らすためには、のフィネスに賭 けるよりありません。 　　とりあえずは切り札狩り、と、注意深くＫ、Ａ、Ｑの順でブロックしないようにプレイした としましょう。さて、次はのフィネス、と 思ったとき、リード権はハンドにあり、ダミーには勝てるカードが残っていません。 　　 フィネスのためのエントリーがないの です。こうなると手からを出す羽目にな り、たとえＫが右手にあっ たとしてもダウンです。

　　この状況を予測して、唯一のダミーへのエントリーＫで勝った時に、のフィネスをし ておくべきでした。手順としては、Ａ、Ｋ、の順でとりあえず２回だけトランプ狩 りをし（まだ切り札が残っていますが、それは後回し）、２を出してＱでフィネスし ます。

２．ラフをエントリーにする
　　急いでラフするよりも、エントリーとして使うために、ラフを後まわしにするほうがよい場合もあります。

Ｎ Ｊ ６５４２ ＫＱＪ10９ ７６２ 　　　Ｓ Ｑ７６ ＡＫＱ８７ ２ Ａ８４３

４ by Ｓ　オープニングリード：Ｋ 　　Ｓのハンドで見て、ルーザーは、ス ペード３、ハート ０、ダイヤモンド１、クラブ３の７つ。４つも減らす必要があります。 　　 ディフェンダーはＫのあと、 切り札のにスイッチしました。 とりあえず、スペードをダミーで切ってしまおうとＡでとって、７→５でラフ、Ａで手に戻り、Ｑ→６でもう一度ラフしたとします。次にＫ、Ｑで切り札狩りをし、それからを出すと、どうなるでしょう？？ 　　ディフェンダーに、Ａと、ＫＱＪをとられるので２ダウンです。

　　これは、きちんと計画を立てていなかったのが原因です。を２回ラフして も、ルーザーは２つしか減らないのですから、別の方法を考えるべきでした。

　　ダミーのすばらしいを活用し、Ａに負けて４トリック増やすことを考えま しょう。それをとるには、切り札 を狩リ終えたあと、以外のスートでダミーに入る必要がありま す。そのときに備えて、→でラフのエントリーをとっておけばよかっ たのです。

　　手順としては、Ａ，Ｋ，Ｑ（切り札狩り）、２→Ａ（エスタブリッシュ）、リターンをＡで勝つ（ストッパーの保 持）、７→６でラフ（エントリー）、ＱＪ10９（ウィナーのキャッシュ）とな ります。